Feb 10, 2012

『あんぽん』

あんぽん

本を読みました。
孫正義氏についてジャーナリスト、ノンフィクション作家の佐野眞一さんが書かれたこちらの書籍。

佐野さんが孫氏本人、また彼の親族の方々にインタビューをおこなう形で書かれてます。この本には孫氏の生涯を扱った多くの本にはあまりみられないところがあります。それは、いわゆる孫氏の高校を中退してまで行ったアメリカ留学を経てのソフトバンク設立といった成功、美談的な歴史に関する記述が少なく、むしろ氏の幼少期、そして彼にかかわってきた人々、特に彼の親族に焦点が当てられています。本書で、佐野さんは孫正義氏も知らなかったような事実まで堀りおこしています。佐野さんの取材力がなければなりたたなかったと思います。とてもディープな一冊でした。

この孫正義氏、また彼の一族(むしろこっちに重点が置かれてる)について詳細にわたり書かれたこの本を読んていくうちに僕は過去に影響を受けた一冊の本を思い出しました。



金城一紀氏の書かれた『GO』という本です。かるくあらすじをかいてみたいと思います。

父親に言われた、「広い世界を見るんだ。」の一言。そして朝鮮学校から日本の高校に進学することを選んだ、いわゆる在日韓国人である杉原という少年。杉原は日本で生まれ、日本で育った。だけど、まわりからは”在日”ってよばれてる。国ってなんだ。国境ってなんだ。そんなことを考えながら自分が誰なのかを考え続ける杉原。そして彼は日本人の女の子に恋をします。

ま、読んでみてください。きっと楽しめると思います。たしか初めてこの本を読んだのは中学1年生のときだったとおもいます。そのときから今に至るまでに何度もこの本を読みかえしてきました。『あんぽん』を読んだ際になぜこの本がうかんできたのか。孫正義氏も在日韓国であり(日本に帰化しています)、杉原とは時代背景がことなるにせよ、おそらく同じような思いをしてきたはずです。そういった思いを本書を通じて感じたからでしょう。

すこし話が脱線しました。『あんぽん』にもどります。
僕がこの書籍を通じて孫正義という男の人生、バックグラウンドを知って思ったのは、孫正義という男の壮大な人生(本当にすごいです)について話す際に彼の成功をどれだけ語ったとしても、在日問題は、良くも悪くも、彼の一部であって切り離すことはできないってことです。どういうことかというと、事実として、いまでもときおり孫氏のTwitterに対して何も考えていない馬鹿が心ないコメントをしていたりする。かと思えば、某雑誌もまったく面白くないコラムで孫氏を中傷していたりする。なぜか。彼がいわゆる在日と呼ばれる人々のひとりだからです。では、そこで孫正義と在日を切り離せばいいのか。そうじゃなくて孫正義という男は日本で生まれ育ったこと、在日差別をうけたことも、まわりの在日同士のいざこざもすべて含めたときに初めて孫正義という男になるんだと思う。
そういうところを果敢に追求していったのが本書です。とてもおもしろい一冊でした。

No comments:

Post a Comment