多くの人にとって、人生のある一地点を過ぎるまでは音楽の趣向は程度の差こそあるにしても変遷していくものなのだと思う。
ふとした瞬間に以前好んで聴いていた音楽と再会することがある。そんなときに当時の想いたちが私たちに帰ってくることがある。言葉では言い表せないような、ある種の重さを伴ったものから、胸がほっこりするような温かいものまで。そんな経験を幾度となく繰り返すうちに、改めて心に残る音楽とは、作品自体の素晴らしさだけではなく、そこに付随した私たちの想いが私たちを離さない、そういった種類のものなのではないかと思わずにはいられない。
それは言葉によるフラッシュバックとはまた違う、私たちに選択の余地を与えない類いのものな気がする。それが音楽の素晴らしさであり、同時に残酷なところでもあるのではないか、と。
(Aldous Huxley)
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